270 / 513
国家欺瞞の君 4
「こ……、困る…!!!」
「いたぁい…」
イオンはベッドに這い上るとリウムの肩を掴んだ。
「それエルメーザくんは知ってるの!?」
「いやー…だから、これから話そうかなー?って…」
「ま、待って…!?俺まだ返事貰ってないんだよね!?」
「返事…?」
リウムはイオンを見上げてくるが、必死になって彼に顔を近付けた。
目覚めた勢いで告白してしまったものの、レンシアからはまだ何も言われていないのだ。
だけどイオンは、ワンチャンいけるのでは、という淡い期待を抱いていた。
だってレンシアは自分のためにハンカチに刺繍をしてくれたかもしれなくて、
それにずっと看病していてくれたようだったし、責任を取れ、とかも言われた気がするので。
しかしもしも彼がまたエルメーザと婚約することになってしまったら…。
「い、いや…確かに自惚れ5000%だとは思うけど…!
今60年に一度くらいの奇跡が起きようとしているかもしれなくて…!?」
「はぁ…?何言ってんの?」
「おい落ち着けイオン、非常に腹立たしいが一応怪我人だぞ」
「そうやで!殴りたくなるのもわかるけど!落ち着いて!」
イオンはローラとイヴィトに引き剥がされてしまったが、謎の汗がだらだら出てきてしまう。
「た…確かにレンシアさんとエルメーザくんはお似合いかもしれないし…
俺に何一つ勝てる要素ないのは分かってるけど…
で…でも…初めて彼氏ができる千載一遇のチャンスかもしれなくて…」
せめて一回くらいキス…いや…デート…、とイオンは錯乱しながら呟いた。
レンシアはハグをしても嫌がらなかったし、寧ろ自分から抱き着いてくれたし、と気味の悪い証拠探しをしてしまう。
「全く恋愛脳め…今心配するのはそれか?」
「イオン…メッチャ必死なんやな…」
「俺のこと好きかもしれない子なんて今後二度と現れないかもしれないでしょ!!?!」
「自己肯定感低すぎないか?」
冷めた目で見てくる二人にイオンは半狂乱で叫んだ。
ともだちにシェアしよう!

