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夕暮れ時には 1
リウムがとんでもないことをやらかしていたのはさておき、
イオンはレンシアを探して学園内を駆け回っていた。
もうすっかり日も落ちかけているというのに、まだ寮に戻ってこない彼に居ても立っても居られなかったのだ。
教室や食堂や図書室を探し回って走りながらも、レンシアに何を言うつもりなのだろう、ともう一人の自分が呟いてくる。
リウムは別れる気はなさそうだったが、婚約者は一応皇帝家が定めている事なのだろうし
好きとか嫌いとか、恋愛だけで決められる事では無いのかもしれない。
幸か不幸かレンシアは今フリーではあるのだけれど、もしまたそうなってしまったら、
付き合うどころか想いを伝える事すらしてはいけなくなってしまうかもしれない。
そうなってしまう前に、もう一度だけちゃんと気持ちを伝えた方がいいだろう。
そもそもこの気持ちは言わないつもりだったけど、不本意ながら死にかけて、
やっぱり後悔のないようにしたいと思ったのだ。
本当は、同じ気持ちだったら嬉しいけど。
だけどそうでなくたって、やっぱり。
死んだ後後悔するよりは好きな人には好きと伝えて、おきたいから。
外に出て飼育小屋まで行くと、用務員からレンシアは温室にいるという情報を得られた。
温室内は夕暮れ色に染まっていて、生物達も微睡んでいるようで静かだった。
レンシアの気配を辿って温室内を探し回ると、植物の鉢の前にしゃがみ込んでいる生徒の後ろ姿を見つける。
金色の髪を雑にまとめていて、何か作業をしているようだった。
「っ…レンシアさん…!」
イオンが声をかけると、彼は驚いたように振り返り立ち上がった。
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