273 / 513
夕暮れ時には 2
「イオンさん…?どうしたのですか?」
レンシアは手袋をつけていて、頬も少し土で汚れていた。
それなのに全く損なわれていない美しい瞳に見つめられると、イオンは何も言えなくなってしまう。
走ってきた所為で息を弾ませているイオンに、彼は不安げに首を傾ける。
「何か…あったのですか……?」
「えっと…あったといえばあったんですけど…その…」
あの時は目覚めた勢いで告白してしまったので、いざこうして面と向かうと何を言えばいいのかわからなくなってしまう。
夕暮れのオレンジ色に染まった世界の中で、レンシアの紫色の瞳は不思議な色に輝いていた。
「あの……あの、俺……れ、レンシアさんが………」
心臓が煩いくらい騒いでいて、言葉を紡ぐ度に口から内臓が飛び出しそうで
イオンは震えながら両手を握り締める。
言わなきゃ、ちゃんと。伝えなきゃ。
イオンは勇気を振り絞って一度大きく息を吸い込んだ。
「…っレンシアさんのことが、す」
『オォォイ!イキテルカー!?!ドーテー!』
「キャ!?」
告白しようとした瞬間、頭を殴られたみたいな衝撃が走りイオンは床に崩れ落ちた。
その拍子に床に置いてあったものを引き倒し凄い音が鳴り響いたが、
顔に何かが覆い被さっていて、藻搔いて格闘してしまう。
ようやく引き剥がすと、それは横縞模様のオウムだった。
オウムはゲラゲラと笑っている。
「お、お前ぇぇ!邪魔すんなよ!!?」
『ジャマサレルホウガワルイゾィ』
「どういう理屈だよ!」
相変わらずオウムの口の悪さに怒鳴っていると、レンシアは心配そうに腰を折って覗き込んでくる。
「だ、大丈夫ですか…?」
「大丈夫です…すみません……うわ!?やばいことに…」
周りを見ると、倒してしまったバケツやら土の袋やら資材らしきものやらが散乱してしまっている。
イオンは慌ててそれらを元に戻そうと床に這いつくばった。
ともだちにシェアしよう!

