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一途でいなさい! 2
「………イオンくん」
突然飛び込んできた低い良い声に思わず背筋がピンと伸びてしまう。
顔を上げるとエルメーザが目の前にいて、慌てて雑誌を閉じて立ち上がった。
「え、エルメーザくん…ど、どうしました?」
エルメーザはいつも通り真顔だったが、なんだか以前のような覇気がないようにも見える。
彼はベンチに腰を下ろすと小さくため息を溢した。
「レンシアを探していたんだが…」
「マジ?実は俺も探してたけど見つからなくって…」
彼の隣に再び腰を下ろしてヘラヘラ笑ったが、何故エルメーザが探しているのだろうと一瞬で疑問に思ってしまう。
彼の叔父はレンシアにエルメーザに二度と近付くなとか言っていたし。
「この前の件……礼を言わねばと思ったのだが…」
「礼……って…お礼…?エルメーザくんが!?」
思わず叫んでしまうとエルメーザに横目でじろっと睨まれてしまう。
「…私も感謝くらいはする…」
「そ、そうだよね…」
「リウムは…精霊を“二回”呼んで……、魔法を奪われる寸前だった。
…でも私には何もできなかった。
レンシアに説得されて…いなければ、どうなっていたかわからない…」
リウムは付き纏われている、と言っていたしなんだかなんでもない事のように言っていたが
命が危なかったのは本当だったのだろう。
「レンシアは…例え自分と引き換えになっても助けようとしていた…
勿論、君のためだと思うが」
やはりレンシアは無茶をしていたらしい。
イオンは、胸に湧き起こる感情の不可解さに何も言えなかった。
直接伝えたように、あまり自分を犠牲にするような事はしてほしく無かったけど
それでもそんな風に、救おうとしてくれた彼の想いは嬉しいと思ってしまうから。
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