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一途でいなさい! 4

「……正直…、好きというのがどういう感情なのか分からない… リウムは大切に思っている…、目を覚まさなかったときは…っ…どうなってしまうのかと…」 彼はそう言いながら両手で顔を覆ってしまった。 その姿を見る限りでは、リウムの事を本気で大事に思っていそうだったが 実はどっちも大事とか言い出したらどうしようと焦ってしまう。 次期皇帝だし、全然許されそうな立場なんだからやめてほしいと思うのはお門違いだろうか。 本当はレンシアが誰とどうなろうと口を挟む権利はないのに、イオンはリウムのあの告白を聞いてからやっぱり妙に焦ってしまっているのだ。 それは取られたくないという気持ちがないと言えば嘘になるが、それ以上に、またレンシアが傷付くのではと思うと。 「エルメーザくん……もしも、レンシアさんが本物の“大天使の生まれ変わり”だったら、…どうするつもり?」 「……何…?」 エルメーザはその深紅の瞳をこちらへと向けてくる。 「誰にも分からない、確証のない事なんでしょ… もし今後また別の偉い人が、レンシアさんこそがそうだって言ったら、エルメーザくんはまたレンシアさんと婚約するの? リウムを捨てて?」 「捨てるなんて…」 「俺は国とか皇帝家が定めている事がどれだけ重大かは分かんないよ… でも、…レンシアさんがまた傷付くことになったら、俺はすごく嫌だし…許せないと、思う…」 「………もしそうなっても…皇帝家に入るのは…この上ない名誉なはずだ…」 エルメーザはどこか罰が悪そうに呟いた。 イオンは流石に苛立ってしまって、彼の肩を掴む。 「っ…違うよ!そういう事じゃなくて… リウムが同じように傷付いたりしたら、あの人は心を痛める…! もしかすると自分がそうされる以上に、辛く感じるかもしれないんだよ!?」 「……っ」

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