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学べない分野 2
イオンに、好きだと言われた。
死にかけていた彼が飛び起きて言った言葉だから、誰かと間違えていたのかもしれないし
寝ぼけていたのかもしれないと思っていたけど
昨日は感情に任せてつい、愛しているだなんて言ってしまったのだ。
それだけならまだしも、結婚、だなんて。
思い出すと胸がドキドキして顔が熱くなって、思わず叫び出したくなるので
レンシアは一人で首を振って思考を散らした。
思い上がってはいけないのだ。
イオンはあんな風にしているけど十家の人間だ。
言うなれば皇帝の次くらいに偉い家の跡取りで、婚約者の一人や二人いてもなんら不思議ではない。
それに、この前婚約破棄され離縁され世間から大バッシングを喰らっているような人間なんてそもそも釣り合うはずがない。
イオンがどんなつもりであんな事を言ったのかは分からないけど自由な学生時代だけの恋人とか二号さんとか色々考えられる要因はあるのに
そんなのは嫌だと思ってしまっていて、
そんな自分が烏滸がましくて弁えない恥知らずな思考だと思うと頭と心の整理が付かないのだった。
図書室から出ると、すっかり夜になっている。
レンシアはなんだかイオンと顔を合わせ辛くてわざと時間をずらしてしまっていた。
エルメーザといた頃にも似たような事をしていて、自分は変わったようで何も変わって居ないのかもと落ち込んでしまう。
廊下の窓に近付くと、自分の顔が反射していた。
「…逃げてる…よね……」
今までは必死だった。
エルメーザはとても遠い人で、必死に追いかけなきゃいけなかったから。
だけどその分どうせ自分なんて見てもらえないだろうとたかを括っていたのだ。
だけどあの人は、ちゃんと向き合おうとしてくれるから。
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