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学べない分野 3

窓の中の自分にため息を溢していると、ふ、と違和感を感じてローブのポケットに手を突っ込んだ。 ハンカチに包んでいた例の石を取り出して目を落とす。 「え…ヒビが入ってる……?」 黒い石には稲妻のようなヒビが入っていた。 それは前には無かった気がして眉根を寄せてしまう。 雑に扱っていたつもりはなかったが、いつも持ち歩いていたので傷付いてしまったのだろうか。 「………ごめん、ね…」 結局これがなんなのかは分からなかったし、一度は捨てようとしてしまった石だった。 だけど精霊と話していたあの時、この石が助けてくれた気がして。 記憶は曖昧だったけど、 なんとなくお守りのような気持ちで持っていたのだがちゃんとケースとかに入れておいた方が良かっただろうか。 レンシアは石を撫でて、再びハンカチで丁重に包んだ。 ポケットに入れるとまたヒビが酷くなるかもと恐ろしくなって、 そのまま両手で大切に持って寮の部屋まで戻った。 部屋にはイオンの姿は無くて、結構遅い時間なのにと少し心配に思ったが ローラやイヴィト達か、或いはリウムの所にでも行っているのかもしれない。 机の上に石を丁重に置き、レンシアはシャワーへと向かった。

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