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嘘つきへの断罪 2

「………イオンさん…」 レンシアは思わず服の上から自分の胸を抑えてしまった。 なんだか苦しくて胸がぎゅうっと痛くなる。 だけどその苦しさは不思議と嫌ではなくて。 「…ただいまぁ……」 ドアが開く音と共にどこかくたびれたような声が聞こえてきて、レンシアは慌てて涙を拭った。 しかしすぐに彼に見つかってしまい、イオンは目を開くと床に座り込むようにして顔を覗き込んでくる。 「レンシアさん…!?どうしたんですか!?」 「な…なんでもありません…おかえりなさい…」 鼻を啜りながら微笑むが、イオンは心配そうな顔をしている。 「どこか痛いとか…?」 「ち、違います。そうではなくてちょっと色々思い出して… …いえ…なんでも、ないです…大丈夫ですから」 慌てて言い訳するとイオンはどこか悲しそうに目を細めて、そうですか…、と呟いた。 レンシアは離れていきそうな彼の腕をつい掴んでしまった。 「あ…あの、イオンさん…俺……ごめん、なさい……」 どうにか謝罪の言葉を口に出来たけど、泣いてしまっていた事もあって心臓が変に騒いでいて また泣いてしまいそうで、まともに彼の顔も見れずに俯いてしまう。 「……俺の方こそ、ごめんね…」 イオンはそう言いながら再び床に膝をつくようにしてくれた。 上位貴族であるはずなのに彼はいつもそうやって、平気で床に跪いてくれて目を合わせようとしてくれる。 「急に変なこと言って…最低だったよね…」 「い、いえ…違うのです…俺が……身の程知らずで…」 「……レンシアさん…俺は……その…」 レンシアはそんな彼の目をやっぱり見れなくて、眉根を寄せながら自分の服をぎゅうっと掴んでしまう。 あんなに色々考えていたのに、いざ彼に見られていると思うとなんだかそわそわとしてしまって。 「あの…俺……俺は…」 ちゃんと伝えなきゃ、逃げずに。 レンシアは意を決して顔を上げて口を開いた。

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