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嘘つきへの断罪 3
「見てるだけで充分なんです」
「見てるだけでよくて」
彼とほとんど同時に言葉が放たれてしまい、何が起こったのかと頭の中が真っ白になってしまう。
緑色の瞳も驚いたようにこちらを見ていて、暫くそうして見つめ合ってしまった。
「え…ええっと…。
おんなじ気持ちなんだねー…なぁんて…」
イオンは困ったように微笑んでいて、レンシアはまた胸が苦しくなってしまっていた。
また自分は、嘘、をついている。
それに気付いてしまった。
だから、こうして向かい合いたく無かったのに。
「……嘘…、嘘です……」
「え…?」
「ごめんなさい…、本当は…」
ぽとりと涙が溢れてしまった。
「本当は……あなたに、触れたい……」
本当のこと、はいつも矮小で醜悪で、呆れるくらい。
自分が持っている真実なんていつも見せてはいけないようなものばかりで。
それでもその緑色の美しい瞳から目を逸らせなくて、ぼやけた視界の中見つめ続けてしまうのだ。
「っ……ごめん…なさい……」
沢山言いたいことがあったはずなのに、それ以上うまく言葉を紡げず謝る事しか出来なかった。
だけどイオンは、優しくレンシアの頭に触れてくれる。
「なんで謝るの…」
「だ、だって…こんな事…、俺なんかが…」
罪悪感と恥ずかしさで消えたくなりながら、レンシアはぽたぽたと涙を流してしまっていて
イオンはそれを指先で拭ってくれる。
「なんか、じゃないよ…レンシアさんはすごく素敵な人だし
優しい…人だ」
それはあなたの事では、と思いながらもレンシアはそれ以上は何も言えずに泣きながら彼を見つめてしまった。
今この瞬間も、その前から、ずっとずっと彼に惹かれていて
どんなに想ってはいけないと分かっていても、彼と話す度に、彼が視界に入る度に
こうして向き合ってもらう度に、手を伸ばしたくなってしまう。
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