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二生目の正直 1

一体何が起きているというのだろう。 エルメーザに振り回され会社の事で電話をしていたら夕食を食べ損ね、 今日は散々だったと肩を落として部屋に戻ってきたはずなのに。 イオンは頭が爆発しそうになりながら、ベッドに転がっているレンシアを見下ろしていた。 いつもあんまり見ないようにしているのに、 無防備なパジャマ姿の彼は、顔は赤らんでいるし瞳は潤んでいるし、はぁ、と甘い吐息を溢しているし 拗らせ過ぎていかれた脳が見せている夢かと疑いたくなるような据え膳状態である。 しかしここまできたらもう腹を括るしかないだろう。 「レンシアさん…良いん…ですね……?」 だけど情けなく聞いてしまうと、レンシアは恥ずかしそうに目を逸らしながらこくりと頷いた。 変な声が出そうになりながら、イオンは怖々と彼の腰辺りに手を触れた。 撫でるようにしながらちょっとだけ服を捲ると、白い肌が見えて死にそうになってしまう。 30数年間くらい延々と使い所のないシミュレーションをしまくっていたはずなのに、現実は難易度が高過ぎるようだった。 「…イオンさん……あの……」 「は、はは…ハイ!?」 レンシアは目を逸らしたまま恥ずかしそうに口元に指を持ってきて、眉根を寄せている。 「…ひ…ひどくしても……いいので……」 「…ど………」 潤んだ瞳で、ちら…、と見上げられながら呟かれると 頭の中も心臓もどったんばったん大騒ぎになってしまう。 優しくして…、パターンは100万回想像していたが、現実のえちえちのレベルの高さには太刀打ちできないかもしれない。 「やさしく…やさしくをこころがけます……」 声をひっくり返らせながらも、自分に言い聞かせるように呟いた。

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