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本領 1
晴れて童貞を卒業したイオンだったが、でれでれと鼻の下を伸ばして過ごす事が出来ないくらい
妙な忙しさに追われていた。
それは充実している、という表現が正しいような事である。
まず立ち上げた会社が知らない間に話題になっていたらしく、支援希望者が大変な事になってきて
イヴィトやヴェネッタにもういっそ社員になってくれと言いたいくらいこき使ってどうにかこなしていたり
なんとか賞を与えたいとかいう謎の依頼やら
輝く学生を取り上げたいとかいう雑誌の取材やらでイオンは何故かちょっと有名人になりつつあった。
しょうがないので経営者の先輩である両親に相談してみると、大量の会社経営についての書籍が送られてきたり
大企業の社長や税理士などを紹介されたりしたので
休日を使ってそういう人達に話を聞きにいったり
学園側とも提携して、来年以降入学する予定で支援を希望する生徒達に向けて説明会を行ったりと学業はどうしたというくらい忙しくしていた。
だけどどれも全て良い事ではあったし、レンシアは相変わらず機嫌良くしていて手助けもしてくれるので
ブラック企業戦士だった頃よりはあまりオーバーワーク感も感じずに乗りこなしているイオンだった。
レンシアとの関係は一応想いは通じ合っているし、恋人なのかな、と自惚れてはいるものの
ちゃんと付き合ってくださいと伝えたわけじゃないし、とモヤついてる部分もあった。
聞けば学生時代に婚約して卒業と共に結婚する人も多いらしいので、そういうのもありか…、などとなんとなくガチで考えてしまうのだが
婚約にどえらいトラウマのありそうなレンシアには、やっぱりちょっとずつ寄り添っていかなくてはならないとも思う。
前科もあるし、ただ近くに居させてもらえるだけでという気持ちは嘘ではないし。
それ以前に今はやる事がいっぱいなので、
日々を乗りこなしていくのに注力する事にしているイオンだった。
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