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本領 2

食堂の端っこの元村八分席が最早イオンの会社の作業場と化しており、基本的にはイオンとイヴィトとヴェネッタと三人で作業している事が多かった。 時々レンシアやローラやリウムも手伝ってくれたりはするものの、 風体に似合わず真面目でキッチリとしている上に忌憚なく意見してくれるイヴィトと、 喋り出すと煩いが手先が器用で基本的には黙々コツコツと作業してくれるヴェネッタが ビジネスにおいてはやりやすいと感じているイオンだった。 二人も率先して手助けしてくれるので尚の事である。 「この世界って株式会社ないんだよなぁ…くそ…もっと勉強しておけばよかった…… ていうかポストイットも蛍光ペンもないし…!便利だか不便だかわからん世界だ…!」 親から送りつけられてきた膨大な資料を、まずは必要な部分だけピックアップする作業をしながらも 魔法がある割に現代日本の便利グッズを欲してしまうイオンだった。 「ぽ?ぽすといっととは??」 「貼って剥がせる付箋だよ!!!」 「ふせん…?」 「大体なんで羽ペンしかないんだよ…!おしゃれだけど面倒すぎるだろ…!」 莫大な資料を前に頭がおかしくなりかけているイオンがアンティークすぎる世界に愚痴っていると、二人は不思議そうに首を傾けている。 「イオンって時々変なこと言うやんな…。 ペンはペンやん?」 「違うよ!これだったらいちいちインクにつけなきゃならないでしょ!? ここにインクが詰まってたら無限に書けるだろ!」 「おお……?確かに……?」 「考えたこともなかったなぁ…」 何故か驚いたような顔をしている二人に、イオンはため息を溢した。 「この世界の文明がどれくらいかわからないけど…一部の人しか使えないエネルギーに頼るんじゃなくて それがどうみんな使えるようになるかっていうところから技術の発展と進歩が始まるのではないかしら?」 魔法はなんでもできるようで実はそんなに何も出来ないような気がしてしまう。 結局エネルギーはどう使うかなのである。 「おお…!?確かに…!?」 「なんか発明家みたいなこと言うてはる…」

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