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本領 4
「で、でも…イオン殿のハツメイのおかげで自分は助かってるので、頭が上がらないのですよ!
最近!イオン殿のアイディーアで作ったこの住所の判子の注文が殺到しておりまして!」
ヴェネッタはちゃんとフォローするように、さっきから封筒に押していた住所の判子を突き付けている。
判子という概念はあったものの、何かの契約や魔法を使う時のものという概念らしく
お名前判子も住所の判子も存在せず、大量の文書もちまちま手書きするか魔法を使って書くかとかいう超アナログの方法しかなかったため腹が立ったイオンはヴェネッタに作ってもらったのだった。
「これで500年先まで返し終わらない借金が多少なりとも減っちゃうってもんですよ!」
「どんな借金だ…」
ヴェネッタの家庭は貴族にあるまじき財政状況らしく、産まれた瞬間に彼名義の借金がされた程で
学費の心配がなくなっても彼は学園外部に向けて魔道具の商売を続けているらしい。
「まあ確かに…操作の魔法も全員が使えるわけではないからな…」
「ですよねー!?魔法が無くてもインクさえあれば!というまさに画期的な魔道具ですぜ!」
「魔道具じゃなくてただの文房具なんだけどね……」
便利なエネルギーに甘えると文明は発展をやめて堕落していくのだろうかと恐ろしく感じてしまう。
「魔法が無くても使える…か、理事長の薄らハゲが喜びそうな事だな」
ローラはため息を溢しながらも何故か唇を尖らせている。
学園の運営責任者である理事長とはイオンも何度か会っているが、全然若々しいハンサムガイだった気がして苦笑してしまう。
「理事長…別にハゲてなくない?」
「心がハゲあがっとるんだあのバカは」
「ろ…ローラ殿の勇気は一体どこから…??」
「エルメーザくんの事もエルたん呼ばわりしてるもんなぁー」
偉い人を平気でハゲ呼ばわりしているローラにヴェネッタは若干慄いている様子だった。
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