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本領 5

何気ない会話を聞いている中でイオンはふと気付いた事があり思わず腕を組んでしまう。 「…文房具……道具………」 資料をがさがさと漁り、白紙のノートを見つけ出すととりあえず思いついた事を書き留めておいた。 なんだか最近こういう事が多いのだ。 ふ、と突然アイディーアが降りてくるような瞬間が。 「あれ?レンシーやない?」 イヴィトの言葉にイオンはがばりと顔を上げる。 彼の視線は食堂の出入り口の方にあり、そちらへと目を向けると 何故か身体を隠すようにローブの前を掴んで閉じ 背中を丸めてきょろきょろしているレンシアの姿があった。 「ひぃぃ……!レンシア様…!今日も麗しさが一段と極まっておられる!!?」 「たしかに&その通り」 「そうやろか…?いつも通りやん?」 「しかしなんだ?あの不審者ムーブは…」 イヴィトの背中に隠れるようにしてヴェネッタは拝み始め、イオンは全く同意見だったが なんだか様子のおかしい彼には不思議に思ってしまう。 「レンシー!」 「ヒィィィ!?呼ばないでくださいよっ!?何故呼んだし!?!」 「だって友達やし……」 「うわこっち来たじゃんもうぅ!!どうしよう!?!」 「いたた」 ヴェネッタに背中を叩かれているイヴィトだったが、レンシアは変な顔をしながらこちらへやってきた。 ローブをぎゅうっと握りしめている様はその下に何か隠しているようにも見える。 「み…みなさん…ごきげんよう…」 「どうしたんすか?レンシアさん」 「え…ええっと……い、イオンさん…ちょっと良いですか…?」 「え?」 レンシアは背中を丸めながら目を泳がせている。 若干頬も赤らんでいるし、指名されてイオンは無駄にドキドキしてしまう。

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