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保護者 4

レンシアは保護者となっていたヴァガ伯爵に離縁され天涯孤独になっているのだ。 新聞で読んで知っているはずなのに、と遺憾にも思うけど学生の身分ではあらゆる許可が取れない事は現代日本でもあるあるな為異論は唱えられない。 「……そうですよね…」 レンシアは小さく呟くと、じっと彼を見つめているドラゴンの頭を撫でた。 「ごめんね…ジンシーバさん…」 彼は悲しそうに微笑んでいてすっかりと諦めモードである。 するとドラゴンは彼に何か訴えるように鳴き始めてしまった。 そのなんともいえない、ピーピーという声は何と言っているかは分からないが不安そうに聞こえる。 「一日だけ…待ってもらえませんか、どうにか父に連絡を取ってみます」 「……ですが、あなたはただのお友達でしょう?」 「いや…でも…将来的には……、いや、ええっと…」 なんとか食い下がってみるものの論破されてしまって、イオンは脳をフル回転させる。 井小田だったら問題無かったのに、などと考えても無駄な事ばかりを考えてしまって未成年の不自由さを思い出してしまう。 「こちらとしましても引き剥がすのは心苦しいですが…決まりは決まりなので…」 何か言い返したいが何も言葉が出てこなくて、レンシアは諦めたように頷いてしまっている。 その表情は、あの時と同じみたいで。 魔法を抜かれて、どうなっても仕方がないと言っていたあの時と。 それが凄く嫌で嫌で。 そんな顔をさせたいわけじゃないのに、とイオンは焦りと悲しみが沸き起こってきてしまうのだ。 「……では、こちらで引き取らせていただくという事で…」 その言葉を遮るように、ノックの音が飛び込んできた。

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