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一緒に帰ろう 1
十家ハートン侯爵の嫡男であり、ハートン学園の理事長でもあるハートン・ウィリンスの登場により
あんなに難航していた手続きは一瞬で終わってしまった。
どの世界でも権力というものが幅を効かせているらしいが、一応同じ立場なはずなのになんだかなぁと思うイオンだった。
ドラゴン保存協会の建物から出ると、もうすっかりと辺りは暗くなっている。
「ありがとうございました…理事長先生」
レンシアは無事に飼育の許可を貰えたドラゴンを肩に乗せてペコリとウィリンスに頭を下げている。
「ドラゴンには選ばれなければ共には居られないと聞くよ。
その子に選ばれたのは名誉な事だと思いなさい。そしてしっかりと責任を持って面倒見るんだよ」
「はい…これ以上ご迷惑が掛からないように気をつけます…」
「君は学園でも指折りの優秀な生徒だと聞いているからね。期待しているよ。
リチャーデルクスくん、君も別のベクトルでね。」
ウィリンスはイオンにウインクを送ってくれて、そのキザな仕草も様になっているのは
さすがゲームキャラだと全然関係ない事を考えてしまうイオンだった。
「では僕はこれで失礼するよ。
国営の方々との会合に顔を出さなければならんのでね
寄り道せずにまっすぐ帰るんだよ?」
理事長は隣で腕を組んで立っていたローラを見下ろした。
ローラは不機嫌そうに眉根を寄せて彼を睨んでいる。
「なんで俺に言うんだ」
「3人に言ってるよ?もちろん」
じゃあね、と言いながら理事長は去っていってしまい、
取り残された3人と1匹は学園に戻るべく駅に向かって歩き出すのだった。
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