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ドラゴン使いの先輩 1

昼休みにレンシアと落ち合って、ドラゴン使いの三年生を探した。 証言を頼りに三年生の教室のある階を探していると、丁度廊下を歩いている後ろ姿を発見する。 長い黒髪を一つに束ねているすらっとした後ろ姿、そしてその背中に巻き付くように青銀色の鱗が美しい龍の存在で一目で分かった。 「モルフェガレ先輩…!」 イオンが声をかけると、生徒は優雅に振り返り立ち止まってくれた。 吊り目がちな涼やかな目元の美青年で、 またしても高クオリティ顔面に久しぶりに慄くイオンだった。 彼こそがイオンと同じく十家、モルフェガレ家の子息モルフェガレ・サヴァトーラだ。 「君たちは…?」 「えっと…」 『まぁ!』 彼の肩に顎を乗せるようにしていた龍がこちらへと首を伸ばしてくる。 ジンシーバとは違った種類のドラゴンのようで、水棲ドラゴンに近いような細長い身体だ。 『1年生のリチャーデルクス・イオン様とレンシア様ですわね! イオン様はお久し振りでございますわ』 流暢に喋るドラゴンの声が聞こえて来て、イオンは驚いてしまった。 「知ってるのか?」 『知ってるのかじゃないですわよ!イオン様は同じ十家のご子息様! レンシア様は1年生ながら疎通の魔法の歴代最高数値を叩き出しておられるのですよ? サヴァトーラも爪の垢を頂いてはどうです?』 「そ…そうか…」 ドラゴンはペラペラと喋っていて、生徒は肩を竦めている。 「…すまないね、私は人の名前と顔を閃く才能に恵まれていないようで」 「閃く…?」 「顔と名前を思い出すのは閃き力だと思うのだよ」 モルフェガレ先輩は腕を組みながら一人で勝手に頷いている。 やっぱりなかなか変わった先輩らしいと思うイオンだった。

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