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同じ日産まれ 2

「同じ日って…ことは……、あれ!?レンシアさん昨日誕生日だったんすか!?!」 レンシアは不思議そうに首を傾ける。 「たんじょうび…?」 プレゼントの一つも用意していなかった為イオンは無駄に焦ってしまう。 恋人の誕生日を祝えないのはなかなかギルティだと勝手に思い込んでいるからだ。 「えー!教えてよぅ!…お祝いしたかったぁ…」 「ごめんなさい…俺も…自分がいつ産まれたのか知らなくて…」 「え?あ…」 レンシアはあまりにも絵画のような上品な振る舞いでいるが、孤児院出身だったのだ。 もしかするといつ産まれたのかも分からないまま孤児院に預けられたのかもしれない。 そう思うとまた別のベクトルで焦ってしまう。 「す、すみません…」 「いえ。良いのですよ。 でもそっか……同じ日に産まれたのなら…、そうなのかもしれないですね」 レンシアはそう言って目を細めている。 彼が今どんな気持ちなのかは分からないけど、 そのなんとも言えない表情が、あまりにも美しくて。 「いやせめて近々でも!絶対お祝いさせてね!?!」 「でも…イオンさんからはもう充分して頂いていますし…」 「いやいやプレゼントとかしたいじゃん!?」 「プレゼントならもう頂いてます」 「え?」 「……恋人に、して頂きましたし… それにジンシーバさんも、産まれて来てくれて… たくさん、頂いてます…」 レンシアはそう言って少し頬を染めて微笑んだ。 その幸せそうな笑顔は実に胸と腰に来て、イオンは重たいカゴを持ったまま地面に沈んでいきそうになったが 慌てて立て直した。 「だめだめ!俺がしたいので!」 「えぇ…?」 「せめてケーキと寿司は喰わねば!お誕生日なんですから!」 「すし?」 彼は不思議そうにしていたが、恋人になったのは自分がお願いした事だしプレゼントには全然入らない気がして。 それに何より恋人の誕生日を祝うのなんて初めてのことなのでちゃんとやりたい、と切望してしまうイオンであった。

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