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同じ日産まれ 3
階段に差し掛かると下の階から誰かが登ってきているようで、二人は大荷物もある為踊り場で避けて待つ事にした。
「…あ」
二人と下から登ってきた生徒は同時に声を上げる。
深紅の瞳に睨まれ、イオンはカゴを抱き締めながら苦笑してしまう。
「え、エルメーザくん…」
「こんな所で何をしているんだ」
「えっと…ちょっとサヴァトーラ先輩に用事があって…」
「サヴァトーラ…?モルフェガレ家の?」
エルメーザは怪訝そうな顔をしながらも階段を登ってくる。
同じフロアに立たれると相変わらず威圧感で仰け反りそうになってしまうイオンだった。
「イオンさんは俺の用事に付き合ってくださっただけです」
レンシアは口を尖らせている。
そんな彼の後ろからドラゴンは目をまん丸にしてエルメーザを見ている。
その様は夜道で出会った猫みたいで、警戒しているのだろうか。
「……ドラゴン、…か…」
エルメーザはぼそりと呟き、小さくため息を溢した。
「きっとお前は…“本物”なのだろうな…レンシア」
「………え?」
エルメーザは罰が悪そうに目を細めると、再び階段を登って行ってしまった。
しかしイオンは、彼の今の発言で嫌な予感がしてしまっていた。
ドラゴン騒動ですっかり忘れていたけど、
もしかするとリウムは彼に黙っていた事を打ち明けてしまったのだろうか。
取られるかもしれない……。
恋愛赤ちゃんのイオンの脳はそんな子供じみた思考に陥ってしまう。
「どういう意味でしょう?」
レンシアは肩を竦めながらこちらを見上げてきて、うーん…、とイオンは唸った。
リウムの事を彼に伝えるべきか、否かと。
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