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奪わないために 3
そこにはリウムが立っていて、辺りをきょろきょろと見回している。
レンシアは大体人間や生き物の気配は感じ取ろうとしなくても分かるはずなのに、全然気付けなくて驚いてしまう。
胸の中のジンシーバが、ぐうぅ、と小さく唸り声をあげた。
「この学園って本当になんでもあるんだねー…」
「ジョルシヒンさん…」
「そんなに警戒しないでよ。僕が悪い奴みたいじゃん?」
彼はそう言って眉を下げて微笑みながらも、置いてあった木箱の上に腰を下ろした。
「…イオンくんには好きって言ってもらえた?」
リウムの纏う空気は、静かで穏やかで光に包まれているようなのに何故だか底知れぬ暗闇も感じてしまって
レンシアはジンシーバを抱き締めたまま何も言い返せずにいた。
「……別に、イオンくんまで奪おうなんて思ってないよ。
だって先輩は結果的に幸せになれたでしょ?
本当に好きな人を見つけられて…ドラゴンまで授かってる。
人生順調、じゃない?」
リウムはそう言いながら木箱の上に足を組んで、ガラス温室の天井を仰いだ。
「あなたはずっと…何をしているのですか……?
一体何が目的で…」
「さぁ?なんだろうね…これが本当に正しいことなのかは分からないけど…
僕は“この世界”が今の所好きだって思えてるよ。
先輩が幸せそうにしてるからさ…それだけでも……」
レンシアにとってはリウムの言っている事はずっと意味不明で、まるで別の次元の話をしているようにも聞こえてしまう。
「ごめんね…?エルメーザと先輩の仲を引き裂いたのは、ちょっとわざとだったよ…
だから先輩が僕のこと嫌いになっても、仕方がないなって…わかってるよ」
リウムは、はぁ、とため息を溢しながら呟いていて
レンシアは地面に膝をついたまま彼をじっと睨んだ。
「あなたを嫌い…とは思いません…
皇帝家がより優れた癒しの魔法使いを選ぶのは当然の事ですし…それ以上に…」
リウムは優れた魔法使いで、そうでなくてもエルメーザはリウムの事をとても大事に思っているのだろう、とレンシアは思っていた。
だから、もしかするとエルメーザにとってはこうなって良かったのかも、と。
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