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奪わないために 6

金色の瞳に睨まれて、レンシアも負けじと睨み返してしまう。 「先輩…、次は僕の事は助けなくていいよ」 「……何を言って…」 「先輩が僕のこと殺したいくらい憎く思ってても…仕方ないって思うしそれを受け入れたい。 僕は、あなたのこと…尊敬してるし… 好きだってずっと、想ってるから」 その瞳の輝きは力強いのに、声が泣きそうに震えているようだった。 イオンにも助けるなと言われた事を思い出す。 あの時は何故か怒りすら湧いてきたものだったが、今は、なんだか。 レンシアはなんだか居た堪れなくなって、彼に近寄っていった。 「ジョルシヒンさん…、 俺はあなたが何をどう考えているのか…何をしたいのかは分かりません…どんな…罪があるのかも… だけど……、俺はあなたを殺したいとは思わないし…恨んでも憎んでもいません エルメーザ様はあなたをきっと特別に想っていらっしゃいます… だから、…あなたも、そうなら…共にいるべきだと思うし… それは…俺では出来なかった事だと思う…」 「どうかな…先輩の代わりは本当は居ないんだと思うよ」 リウムは眉を下げて微笑んだ。 それは天使のように愛らしい微笑みだったけど。 「でも…ありがとう。 僕もエルメーザの事大好きだし、死なせたくないって思ってる。 でもそれは…イオンくんも…他のみんなも…、一緒だよ… 本当は誰も…、傷付いて欲しくないんだ。 それに…」 リウムは木箱から降りると、手を後ろで組んでレンシアに顔を近付けてくる。 「先輩にはいつも笑っててほしいって…想ってるんだよ?」 金色の瞳は甘く輝いて、だけどどこか刹那的だった。 レンシアが何も言い返せないでいるとリウムは、じゃあね、と言いながら去って行ってしまった。 レンシアは結局リウムが何を言いたかったのかよく分からなかったが、彼が何かを抱えているようで それによっての行動は、善悪だと簡単には判断できない事のような気がした。 『……あいつ…こわい…にがて……』 腕の中でドラゴンが愚痴っている。 確かにリウムからは深い闇を感じるけれど、彼から感じる美しい光も偽りのようには感じないのだ。 誰も傷付いて欲しくないという言葉はきっと本心なのだろう。 レンシアはリウムのことがますます分からなくなったけど、あの金色の瞳にじっと見つめられると なんだか少しだけ、哀しいような気持ちになってしまって ぎゅう、とジンシーバを抱き締めるのだった。

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