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アンチテーゼ 3

「……温室でお手伝いをしていたら…ジョルシヒンさんが来てくださって…少し話をしたのです…」 「え?リウムが…?」 「ジンシーバさんは…ちょっと彼のことが苦手みたいで」 レンシアはそう言いながら困ったように微笑んだ。 その顔は何かあったようにイオンには見えて、二人で何を話したのか聞いてもいいのだろうかと迷ってしまう。 「イオンさんは知っていたのですね? ジョルシヒンさんが、癒しの魔法を偽っていたということを…」 「う……その……ごめんなさい……」 レンシアは首を横に振りながら、自分のベッドへと腰を下ろしている。 「リウムが目を覚ました時に…教えて貰って… 本当は変換の魔法で、レンシアさんの魔法をコピーしていたって… 本人は悪気はなさそうでしたけど…」 「コピー…ですか……、 通りで、何もかも一緒だなと思ったのですよ…」 レンシアは力無く笑うと俯いてしまった。 「ジョルシヒンさんが魔法を偽っていた事は俺には咎められません… 俺も…似たようなものです…“大天使の生まれ変わり”と確証がないのにそのように振る舞っていましたから…」 「レンシアさんのよりだいぶ悪いと思うけどね……?」 「でも…ジョルシヒンさんは…、ただ次期皇帝婚約者の地位が欲しかったから策略を企てたようには思えないのです。 エルメーザ様を奪いたかったというのも少し違うような…」 リウムは“先輩の魔法が格好良かったから”とか“面白くて沢山変換した”というような愉快犯的な供述をしていた。 大事だとすら考えていないようにも見えたが、レンシアは重苦しい顔をしている。

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