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アンチテーゼ 4

「俺には…ジョルシヒンさんは私利私欲で他者を陥れるような事はしないように思うのです… 確かに人間の事をあまりよく思っていないようでしたが… 誰も傷付いて欲しくないとも言っていた…それは本心だと感じます…」 レンシアの言葉はイオンも感じている事だった。 リウムは諍いの現場ではいつも仲良くして欲しいと怒鳴り散らしていた。 だけど彼は本心の全てを言わないようにしてもいるのだろう。 「レンシアさんは…どうしたいの?」 「え…?」 「リウムが違うって事がわかったら、世間は多分…やっぱりレンシアさんが本物だったってなると思うよ…」 「そうなれば…リウムさんは……」 リウムは別に隠し立てをする様子はなさそうだったし、もしかするとエルメーザにはもう話したのかもしれない。 皇帝家は一度レンシアを堂々と非難しているのですんなりと、もう一回お願いしますとは言わないだろう。 だけど本物の“大天使の生まれ変わり”と婚姻すべきだとは考えるはずだ。 考えられる可能性としては、リウムを悪役に仕立ててレンシアを返り咲かせる、という感じだろうか。 レンシアもそれを分かっているのか、辛そうに目を伏せっている。 「…俺は…どうすべきなのでしょうか……? …エルメーザ様にとっては…この方がいい気もしますし… だけど…“皇帝家”にとって必要なのは…“癒しの魔法使い”…なのかもしれないし…」 リウムが同じ目に遭えばきっとレンシアは心を痛める、そのイオンの見解は間違っていなさそうだった。 自分に都合よく考えれば、このままでいて欲しいと思ってしまうけど やっぱり、そういうわけにはいかないのだろう。

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