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契約じゃなくても 1

いつもは儚げな雰囲気を纏って美しく居るレンシアが、時々見せる芯の強さみたいなものにイオンは簡単にやられてしまっていって 思わず彼に顔を近付けてしまう。 「レンシアさん、す、好き…っ」 つい告白をしてしまいながら彼に口付けた。 誰かを気遣って、自分を犠牲にしてしまえる優しいレンシアも好きだったけど、やっぱり凛としていて芯を貫いている彼がイオンにとってとても魅力的に見えてしまうから。 彼の唇を喰みながら、 誰かがこんな風に彼に触ると思うと確かに平気ではいられないかもしれないと思ってしまう。 「…俺はあなたにしか…触られたくないのですよ…?」 さっき抓られていた頬を今度は撫でるようにしながら至近距離で言われると、身体が瞬時に沸騰するので イオンはため息を溢しながら彼の頭を撫でて抱き寄せた。 「もう…俺だって本当はそうだよ…… そういう事言われると我慢できなくなるでしょ……」 「……我慢していたのですか?」 そわそわとレンシアの手が胸に触れてくると、イオンは触って欲しいような欲しくないような気持ちになってしまう。 勿論35年と18年あまり童貞だったのでそんなにすぐ何でもスマートに出来るわけではないという事が大きな要因だったが、イオンは勝手に自制していたのだった。 「あんまり負担かけたくないし…」 「負担…?俺は沢山触って欲しいのですけど…」 「……」 腕の中のレンシアを見下ろすと、彼は少し頬を赤らめてちらりとこちらを見上げたが、泣きそうな目をして俯いてしまった。 「…俺では…あまりご満足頂けないのですよね…」 「なななな何を言ってるんすか……」 「ごめんなさい…わがままを言ってはいけないと分かっているのですが… イオンさんは充分すぎるくらい…よくしてくださってるし…」 レンシアは一体何を言っているというのか。 だけどどこか落ち込んでいるようなテイストに、イオンはその顔を覗き込んでしまう。 「でも…こんな風に触られると期待してしまうのですからね…?」 はぁ、とどこか甘い吐息を溢しながらレンシアはイオンの胸を軽く押して退けるとベッドから立ち上がって両手で顔を覆っている。

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