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契約じゃなくても 4
「…謝るのは…俺だね…、レンシアさんに触りたくないとかそういうことじゃないんすよ…
レンシアさんに魅力がないわけないでしょ…寧ろ魅力的過ぎて困っているくらいというか……」
レンシアと同じ部屋にいるだけでそわついてしまうイオンだが、長年の自分を押し殺すスキルを遺憾無く発揮して
まるでショーケース越しに見ているようにして乗り切っていたのだった。
イオンはレンシアの腕を取ってベッドに上げてやると、彼の額に口付ける。
「……俺はね、ずっと好きな人には触っちゃいけないと思って生きて来たから…
頭おかしくなって暴走して傷付けたら嫌だなって…嫌われたらとか思うと怖くて…」
イオンはレンシアのローブをそっと脱がして、ネクタイを優しく解いていった。
「レンシアさんがこんなに我慢してくれてたなんて知らなかったな…幸せすぎてバチが当たりそう」
本当に、こんなに嬉しい事はないように思う。
しかしレンシアはどこか辛そうに震えている。
「俺…下手で…、身体も…こ、声もあんまり…良くないから……
え…エルメーザ様も…全然、触ってくれなくて…いつも、ご無理を言って俺から……」
「ハイ?」
「…っ、月に一度は、触ってもらわなきゃいけなかったのに…っ
俺が…もっと…器量が良かったらと…いつも……」
レンシアはとうとう泣き出してしまって、震える指先で自分のシャツを掴んでぐちゃぐちゃにしている。
彼の異常な自信のなさはなんだかトラウマがありそうで、イオンは目を細めた。
「どういう事っすか…?」
「こん、婚約の契約で…皇帝家の婚約は…とても厳しい制約があって…それを厳守せねば罰が下るようなものになっているのですよ…」
「制約…?」
「そ…その中に……月に一度は…その、精を…注いでもらわなくてはいけないというのがあって………」
「ハ??????」
さっきまで大興奮だったイオンの身体が一気に冷めて行くような発言だった。
そしてその意味がわかってくると別の熱が体内に発生し始める。
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