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ありがたい! 6

痛みを感じた首に手を触れると、そこは濡れていてもしかして噛まれたのかと思い至る。 「……ごめんなさい」 レンシアは泣き出しそうに眉根を寄せて謝って、はぁ、と息を吐き出すと片手でそこに触れてくる。 ピンク色の光が目の端に映ったので、イオンは慌てて彼の腕を掴んで阻止した。 「ま、待って…!?」 「…ですが……あ、あとが……」 「え!?だったらなおのこと治さないでもろて!?」 急に癒しの魔法を使われた事よりも、折角噛んでもらったのにみたいな気持ちの悪い発想で阻止してしまった。 レンシアは眉根を寄せたまま首を傾けていて、イオンは彼の頬を両手で包むようにして撫でた。 「えへ…俺レンシアさんのものみたいでいいでしょ?」 「な…にを言っているのですか…」 「ふふ」 こうやって彼を見ていると幸せを実感してしまって、彼の唇に口付けた。 そしてそのまま一緒にベッドに倒れ込む。 まだちょっと熱った身体でくっついているのが気持ち良くて、軽い口付けをしながらくすくすと笑ってしまう。 「レンシアさんと…ずっとこうしていられたらな…」 ぽわぽわとなっている頭のまま呟かれた言葉は限りなく本心で、世界とか社会とか立場とか力とか、何も関係なくただこうしていられたら良いのにと思ってしまう。 レンシアも小さく笑って、うん、と頷いてくれる。 好きな人と、同じ気持ちというだけで、 何にもいらないような気にさえなってしまうものだ。 ずっと、こうして一緒にいられたらいいのに。 あまりにも簡単で単純なことなのに、 どうしてこんなにも難しく思えてしまうのだろう。

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