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覚えていたいこと 4
「あれーみんな何やってるのぉ?」
花でも咲いたような声を溢しながらひょこりと顔を出したのはリウムだった。
「レンシーのお誕生日会やでー」
「え!先輩誕生日だったの?」
「二日くらい前だけどね…」
「もー言ってよぉ!」
リウムはそう言いながらも頬を膨らませている。
そして両手を合わせ始める。
「ちょっと待ってね…折角の先輩のお誕生日だし……ふん!」
彼は両手に力を込め始め、隙間から金色の光が溢れ出している。
数秒後に光が収まると、リウムは手の中から金ピカの塊を取り出して笑顔で差し出してくる。
「はいこれ!プレゼント!」
「こいつ…惜し気もなく上級魔法を使いやがるな…」
「…いや、ていうかそもそも金の錬成は違法やんか…」
「えぇー?じゃあしょうがないなぁ…」
リウムは口を尖らせながらも塊を再び両手で包んでいる。
再び光が溢れ出しそれが収まると、彼は手の中から緑色に輝く石を取り出した。
「はい!これは“綺麗な石”だよ!あくまでただの“石”ね?
そもそも別に売りつけてるわけじゃないんだしぃ」
「やりたい放題だなぁ…」
「まだ法律ができとらんだけの犯罪…」
「限りなく黒に近いグレーだな」
「や…やっぱり偽天使の君だ……!」
レンシアはリウムから石を押し付けられてしまった。
でも、その緑色の輝きはとても美しかった。
「こんな所にいたのか…」
低い声がして、リウムの頭にぽんと誰かが触れる。
顔を上げると石とは対照的な深紅の瞳がそこに輝いていた。
「あ、エルメーザ!」
「ヒィィ!?じ、じ、次期皇帝!!?!!?」
「やれやれ。続々と集まってきやがって…」
「なんの乱痴気騒ぎだ」
「乱痴気はしてへんよ?」
「先輩のお誕生日なんだって!」
「誕生日……?」
エルメーザは、聞いた事ないぞ、という顔をして眉を顰めている。
奇しくもレンシアはこの中ではエルメーザと一番付き合いが長いわけだが、今までは知り得ない事だったのだ。
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