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覚えていたいこと 6
レンシアは泣くのを我慢しながらイオンを見上げた。
彼にも伝えたが、イオンからはもう充分すぎる程貰っているというのに。
こんな風にみんなから祝ってもらえるのも彼のおかげでしかないのだろうし。
だけどイオンはおずおずと小さな紙袋のようなものを差し出してくれた。
「あ、ええっと…これ……俺からです……」
「イオンさん…」
「好きか分からないけど、開けてみて」
イオンは苦笑していて、レンシアは紙袋を受け取って中を覗いた。
そこには長方形の箱のようなものが入っていて、花のような形でリボンが結んである。
少し勿体無いような気がしながらも、紙袋から箱を取り出してリボンを解いて箱を開けると
紫色の布のようなものが入っていた。
中身を取り出すと、それは細長いリボンのような形で
光に反射してキラキラと光っておりとても綺麗だった。
箱にはもう一枚同じような布が入っており、それはもう少し大きめのようだった。
思わず彼を見上げると、イオンはどこか照れているように微笑んでいる。
「髪のリボンというか…、あったら可愛いかなー?って
一個はレンシアさんに。もう一個は彼に」
そう言ってイオンはドラゴンを指差した。
ジンシーバは、う?と首を傾けている。
確かに、ジンシーバも同じ日に産まれたので誕生日のはずだ。
髪だって、見苦しいだろうから切らなきゃってずっと思っていたのに。
昨日は他の人を好きになっても応援するとか言っていたくせに、
これ以上好きにならせてどういうつもりなのだろう、と
レンシアはいよいよと我慢できなくなってしまい、思わずフードを被って顔を隠した。
「れ、レンシアさん?ごめんね?嫌だった?」
イオンは慌てた様子で顔を覗き込んでくるので、レンシアは首を横に振った。
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