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有限の時の中での無限 5
「リチャーデルクス公爵も夫人も優秀な起業家だからね…その所為かな。
君の柔軟さが今後どう国を動かすのか楽しみだよ」
「国を動かすなんて…俺はただ……」
「つまるところ上位貴族のほとんどは純魔法主義者だ。
だけど国民は、非魔法使いが多い。
最近は少し過激な連中も多いようだからね…」
「過激な連中…?」
イオンは部屋に届いていた怪しげな封筒の存在を思い出した。
純魔法主義を忌み嫌っているようなあの手紙だ。
「反魔法主義…、その名の通りだよ。
魔法使いや魔法そのものを忌み嫌っている。
そして、魔法を持つ者だけが優遇されているこの国の在り方を、ね。
革命軍なんていうのもあるらしいよ?」
貴族や裕福な人間はほとんど魔法使いだらけで明らかに魔法使いは優遇されているとあっては、確かにそういった不満を抱える人もいて当然だ。
ゲームの世界だからとお気楽に構えてはいられないくらい、
ここは現実で、現実にはそういう社会問題や政治的背景は付きものだ。
「理事長は…その……」
「僕はどちらでもないよ。というか、どちらからも仲間はずれって感じかな?
ハートン家もこの学園も僕は継がせないと言われているからね。
でも上位貴族である事には変わりない…」
ウィリンスはそう言って苦笑している。
上位貴族で、ハートン学園の理事長という役職があっても魔法が無ければ冷遇されてしまっているのだろうか。
「魔法は便利な力ではあるかもしれないけど…一部の人しか使えない力にばかり頼るのは危険だと思うんです…
誰でもある程度は出来る方法があった方がいいというか…」
限定的な能力頼りのシステムは、もしもそれがな
くなった時誰もカバー出来なくなってしまう。
仕事出来でなんでもその人が引き受けて仕事を回していたが、その社員が急に辞めて崩壊して行った隣の部署を思い出しながらイオンが呟くと
理事長は目を細めている。
「なんだろうね……君と話していると君が学生だって事を忘れてしまうよ…」
「…あはは…そうっすかね…?」
理事長は確か30代前半くらいだったと記憶している。
今世を足さなくても井小田の方がギリ上のような気がして、イオンは慌ててアホ面で笑ってみたりした。
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