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二学期の端くれ
暑い季節はあっという間に過ぎていき、最近は少し肌寒くなってきた。
ジンシーバはよく食べよく眠り着実に成長しようとしているようで生まれたての頃のようなよちよち歩きも少々はマシになったが、
サイズはそんなに変わっていないような気がする、と思っているレンシアだった。
ドラゴンは定期的にドラゴン保存協会の施設へと行って、健康状態等をチェックする定期健診なるものを受けなければならないが
ジンシーバは今の所は特に問題無く成長しているとの事だった。
ドラゴン保存協会の施設には、保護されているドラゴンなども沢山暮らしているらしく
最近レンシアは、頼まれてドラゴン達の声を聞いたりもしていた。
最初はただ話しかけてくれたドラゴンと喋っていただけなのだが
何らかの事情で傷付いて、なかなか心を開かないようなドラゴンでも何故かレンシアの声には耳を傾けてくれるので
ここは安全だから安心するようにと話して落ち着かせたり、ドラゴンの要求を協会員に伝えたり、と出来る事をやっているのだった。
大人のドラゴンは難しい言葉を使うものの皆饒舌ではあったが、
ジンシーバはそこら辺はまだ子どもらしく単純な言葉しか伝えてくれない。
ドラゴンも人間と似たようなもので発達段階があるのだと協会の研究者は教えてくれた。
まだ自分がどういう状態なのかとか何を感じているのかとか、何となくでしか分からなかったりするのだという。
子どもの頃は自分もそうだったのかもしれないレンシアは思うから、
ジンシーバが急に落ち込んだり癇癪を起こしたり、何故だか楽しそうにしているような無邪気な様を出来るだけ自由にさせて見守っている事にしているのだった。
同室であるイオンにも少々迷惑がかかっているような気がしているが、彼は今の所は、まぁ生き物だし…、と困ったように笑ってくれている。
イオンの心の広さと来たら逆に心配になるくらいだったが、年齢不相応にも思う余裕にレンシアは甘えているのだった。
それが何だかとても、心地が良かったりするものだから。
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