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力を持つ者 1

イオンは新しい会社を立ち上げて、本格的なビジネスをし始めたらしく 学業は大丈夫なのかというくらい忙しくしているようだった。 学園内の購買に彼の会社の商品が並んでいたり、休みの日には商談だとかプレゼンだとか言いながら学園外に出ていたりもした。 イヴィトとヴェネッタも手伝っているらしく、2人が部屋にやって来て遅くまで話し込んだりしている事もあった。 レンシアも何か手伝いたかったけど、どうにもビジネスの事はよく分からないので精々3人に紅茶を淹れてやったり 謎の内職を手伝ったりするくらいだった。 レンシアはレンシアで、飼育小屋の手伝いを続けていたりして 最近はフェディン先生に勧められて、聖堂で祈ったりしている事が多くなった。 癒しの魔法の基本は祈りである、という事もあったけど、 そうしていると心が不思議と落ち着くのだ。 学園内にある聖堂は、普段はあまり使われておらず人もほとんど来ないし、静かに過ごせるので 1日の終わりには大体聖堂に行って、神像を前に祈りを捧げるのがレンシアの日課になっていた。 リウムも勧められていたけど彼は、 いやそもそも癒しの魔法持ってないのに意味ないじゃん? などと言って一度も来た事はないようだった。 リウムはエルメーザとどうやら上手くいっているようだったが、周りの人間はまだリウムが“大天使の生まれ変わり”だと信じてやまないし 彼が魔法を偽っている事はトップシークレットになっているようだ。 エルメーザが知っているのかどうかは分からないけど、側から見ている分には仲睦まじい様子だし レンシアよりもお似合いだとか、リウムの方が相応しいと言った話ばかり聞こえてくるので、 良かったのではないかとレンシアは思う事にした。 嘘を吐くのは苦しくて、自分はとても耐え難かったけどリウムはあまりそうではないのかもしれない。 愛しく思える人と居られるのなら何だって耐えられるという事なのかもしれないけれど。 誰が本物なのかは結局誰にも分からない。 だったら、皆幸せになれる場所で生きていけばいいのではないかと。 自分が自分で生きれるように。そうやって自分に誇れるように。 レンシアはそうやって毎日祈っていた。

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