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力を持つ者 4

「だが…国に必要なのは“本物”かどうかよりも“使える”かどうかだ。 この際君が偽物かどうかなど関係はない。 これだけの癒しの魔法に、ドラゴンとさえ疎通出来る上級魔法。 そして伝説のドラゴンの存在…私は君の方が強いカードだと思えてならないのだよ」 まるで道具のような言い方に、レンシアは思わずジンシーバを抱き締めた。 「…高く評価して頂いているのは感謝致します… ですが…俺は既に婚約破棄された身です。ヴァガ伯爵にも離縁されました。 本来ならば…この学園からも追放され、魔法を封じられていた事でしょう…」 「っは。そんな事は私がさせんよ。 癒しの魔法を持つ人間など稀有な存在だ。 君が“重犯罪”を犯しても、拘束して死ぬまでこき使ってやるさ」 普通に恐ろしい事を言っている男に、レンシアは眉根を寄せてしまう。 「エルメーザ殿下の伴侶となるかどうかはこの際どうでもいい。 殿下があの可愛らしい顔に骨抜きにされる気持ちも分からんでも無いからな…」 「俺に…皇帝家に…支えろ、と…?」 「まさか。こちらから願い下げだと言ったのは皇帝家の方だ。 そんな恥をかかせるわけにはいかないからな。 だが、君はいずれ一つの決定権を持つ存在になるのだと自覚してもらいたい。 君の立ち居振る舞い一つで暴動が起きてもおかしく無いのだからね」 「暴動…?まさか…」 「今の世間の流れは“完全魔法主義”が主流になりつつある。 産まれや育ちよりも、より優れた魔法を持っているかどうかで権力や支持の流れが変わってしまう。 既に君は充分、国を左右する一端を担う力を身に付けていると思うがね」 偉そうな言い方だったが男はレンシアをかなり高く評価しているらしかった。 だけどレンシアはあんまり良い気分にはなれなかった。 自分ではそんなつもりはないが、責任だけがあるようで。

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