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余地のないこと 1
ばつりと視界と思考が遮断されて、気が付くと全身に痛みが走っていた。
レンシアは薄目で世界を眺めながら、どこかぼうっとなる頭を無理矢理動かそうとしていた。
縛り上げられているらしく身動きが取れなくて、妙に息苦しくて。
だけど微睡んでいてはいけないと本能で感じ取っている。
「……っ…」
頭を振ってどうにか意識を叩き起こし、薄暗い空間へと目を向けた。
それは狭くて埃っぽい倉庫のような場所で、レンシアの身体は椅子に縛り付けられていた。
ガシャガシャという冷たい音が聞こえて、首を動かすと床に横たえられているローラの姿と
小さな檻に入れられているジンシーバの姿があった。
「ローラさん…!ジンシーバさん…!!」
「…う……」
ローラも後ろ手で縛られ、足首にもロープが巻き付いていた。
ジンシーバも轡を嵌められて暴れているようだったが、強固な檻は少し揺れる程度だった。
レンシアは記憶が途切れる前のことを思い出していた。
確か、ドラゴン保存協会の施設からの帰り道フードを被った男達に襲われたのだ。
「くそ……捕まったのか……?
すまん…レンしぃ……」
「何を言っているのですか…!俺が…狙われていたと思うのです…
ローラさんは巻き込まれただけで…」
「いや…、“何か”が起こる事は分かっていたんだがな…
まさかこんな事とは思わなんだ…」
ローラは床に転がったまま掠れた声で呟いている。
倉庫内は薄暗かったが、壁の隙間からは光が見える。
もしかすると朝になっているのかもしれない。
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