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余地のないこと 3
レンシアはどうにか光の魔法で両手を縛るロープを焼き切れないかと腕を動かした。
すると頭を掴まれてしまう。
「おっと。魔法を使うなよ
こちらにも魔法の恩恵が無いわけではないからな」
昨日襲われた時は、明らかに魔法による攻撃だった。
反魔法主義の中にも魔法使いはいるらしい。
攻撃系の魔法はほとんど持っていないレンシアは太刀打ち出来なさそうだ。
「…皇帝家は戦争を起こそうとしている…
隣国へと戦いをけしかけ多くの血を流させるつもりだ
だがそれは大掛かりな“黒魔術”のための戦争だ」
「黒魔術……?」
「あいつらは“多くの生贄”を捧げ、黒魔術で他の存在を呼び出すつもりだ…!」
「ああ…!より強力な“魔法”を手に入れるためにな……!」
「そんな都市伝説を信じてるってのか…?」
「皇帝家付きの上級魔法使いから言質は取れている
俺たちだって曖昧な理由でこんな事をする程馬鹿じゃない…」
男達の言葉に、皇帝家の不穏な動きについてや、リウムの言葉を思い出してしまいレンシアは俯いた。
それはもしかすると“本当”なのかもしれない、と。
「自らで敷いている違法行為に国ぐるみで手を染めて…
犠牲になるのは何も知らない、魔法を授からなかっただけの平民達だ…!」
「こんな暴虐が許されて言いわけがない…!」
「…仰ることはご尤もかもしれんが、それを抗議したくてやる事がレンしぃを拘束する事か?」
「勿論ただの腹いせじゃないさ。レンシア、お前にやってもらいたい事がある」
男の中の1人がレンシアに近付き、小さな小瓶のようなものを差し出してくる。
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