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余地のないこと 4
「即効性の猛毒だ」
その言葉にレンシアはゾッとしてしまいながら男を見上げた。
フードを深く被っていて顔は見えない。
「こいつをエルメーザに飲ませるんだ」
「…な……何を言って……」
「暗殺しろっていうのか!?」
「お前にとっては“復讐”だろ?」
顔が見えなくても男が笑っているのがわかった。
レンシアは頭がぐらぐらするのを感じながら、小瓶の中で揺れている透明の液体を捉えていた。
「エルメーザさんは…戦争など知らないはずです…
彼を殺しても…何の意味も…」
「言っただろ?これは遊びではなく“大義”だと。
エルメーザは、次期皇帝という以上にこの忌々しい魔法の世界において重要な人間なんだ」
「……?」
「それにお前はやるしかないはずだ。
1度は“大天使の生まれ変わり”などと持て囃されたお優しい魔法使い殿は、お友達を見殺しになんて出来ないだろ?」
男達の数名が、ローラを取り囲むようにして立っている。
「こいつらのバカな口車になんて乗るな…
お前らが高く買っている通り目敏い次期皇帝殿が毒入りのものなんか飲むわけないだろ…!」
「お前は黙っていろ!」
「……ッ…!」
ローラは腹に蹴りを入れられており、レンシアは泣き出しそうになりながら目の前の男を見上げた。
「やめてください…!痛め付けたいなら俺を…!」
「止めたいのならそいつのよく回る口を塞がせておけ」
「ローラさんの仰る通りです…エルメーザさんがそう簡単に他人から与えられたものを口にするはずがありません…!」
「そんなのは知ったことではない。
どうやってエルメーザに毒を飲ませるか、考えるのはお前の仕事だ
失敗しても困るのはお前だぞ?こいつらの命はないだろうからな」
男はそういうと、長いローブの裾からキラリと光るナイフを取り出した。
そして咳き込んでいるローラに近付くと、彼の髪の毛を掴むようにして身体を持ち上げ首にナイフを当てている。
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