405 / 513
余地のないこと 5
「っ、やめて……!お願い…っ…!」
「やるんだな?」
男の言葉にレンシアは唇を噛み締めて頷いた。
「レンしぃ…、どういう事か分かっているのか…っ
どうせこいつらは俺達のことを生かす気なんかないぞ…!」
「それはお前の身の振り方次第だ、レンシア」
男はそう言うと、ローラの足に容赦なくナイフを突き立てた。
「ローラさん!!!」
「…ッ、てめ…え……」
ローラの足からは赤い血が流れ始める。
「頑張って耐えても1時間といったところか。
その前に死ぬ場合も大いにあるだろうな。
妙な動きをすればこのナイフを抜いてもっと死期を早めてもいい。こいつが人質として役立たずになれば今度はこっちを甚振ろうか?」
男はそう言いながらくつくつと笑い、足元にあった小さな檻を蹴った。
怯えて大人しくなっていたジンシーバはガタガタと震えている。
「なんてことを……っ…」
「お前が言う資格はないぞ?これから殺人者になるんだからな」
「…っ…」
レンシアはようやく拘束を解かれて、小瓶を渡された。
ローラは床に倒れ、ナイフが突き刺さったままの足からは血が流れ出している。
「……はぁ……、レン、しぃ……やめ、ろ……従…う、な…」
「ごめんなさい…ローラさん……」
レンシアは震える手で小瓶を握りしめて、男達に囲まれながら小屋を出た。
外はすっかりと日が昇っていて、
どうやらもう昼頃になってしまっているようだ。
「いいか?俺たちはお前を遠くから監視している。
お前はまっすぐにエルメーザの元へ行き、その毒を飲ませろ。
俺たちの存在は一切明かすな。
もしも…しくじったり、何か妙な事をしでかせばあいつらがどうなるか分かるな?」
「……俺が…エルメーザさんにこれを飲ませたら、ローラさんは助けてくれますね…?」
「そうだな。手当くらいはしてやろう
ついでにお前との記憶も消してやる。そうすれば命は取らなくて済むからな。
これで満足か?」
「ええ…ありがとうございます……」
「じゃあさっさと行け。お前の魔法は上級魔法使いにも引けを取らないんだろ?
期待しているぞ」
レンシアは頷きながら、学園へと向かって走り出した。
ともだちにシェアしよう!

