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最後のティータイム 1

いつも通りの学園の風景が、モノクロになっているみたいだった。 まるで生きた心地がしないまま、レンシアは校内を足早に進んでいく。 丁度昼休みになったばかりなのか、生徒達が教室からわらわらと出てきて食堂へ向かっているようだった。 レンシアは人の流れと逆行し、エルメーザの姿を探しながら廊下を進んでいた。 すると、他の生徒より頭一つ抜けている生徒が こちらに気付き大きく目を見開くと駆け寄ってくる。 「レンシアさん…!! よかった…、昨日帰って来ないから心配したんですよ…!ローラもそうだって言うし… いくらお手紙があったとはいえ事情も説明しないでどこ行ってたんすか…」 イオンは泣きそうな目をしながら身を屈めて腕を掴んでくる。 その緑色の瞳に見つめられると彼に胸の内を全て打ち明けて、抱き締めて欲しいような気持ちになってしまうけど 背中にべっとりと張り付いているような視線を感じて、 その恐ろしい感覚にレンシアは彼も巻き込まれる可能性を感じてしまいその腕を振り解いた。 「……ごめんなさい…急いでいるのです」 「…え……」 「…ごきげんよう…」 ぽかんとしているイオンに、レンシアは溢れそうな涙を出て来させまいと唇を噛み締めた。 レンシアは、これから自分が向かう場所がどこなのか薄々勘付いていた。 多分このまま行けば、もう二度と。 『イオンさん…振り返らないで聞いて…』 レンシアはゆったりと歩き出し、疎通の魔法で彼に語りかけた。 『東棟の裏の小屋にローラさんとジンシーバさんが捕まっています…! 理事長先生に話してすぐに助けて…、お願い……!』 あまり時間をかけても怪しまれてしまうだろう、と通り過ぎるまでの短い間彼にだけ伝わるように神経を研ぎ澄ました。 『……ジンシーバさんのこと、頼みます』 レンシアはそれだけ伝えると、再び早歩きに廊下を突っ切って行った。 後ろを振り返ることはできなかった。 本当はもっと言いたい事がいっぱいあった。 だけど、これから自分が辿る運命を想像すると、それ以上は何も言ってはいけない気もした。

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