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最後のティータイム 4
「私への暗殺依頼を受けてのこのことやって来たのか?
そんな見え透いたもので殺そうとでも?」
案の定の結果に、レンシアは顔を上げて小さく微笑んだ。
「俺が…誰かを殺せるわけないでしょう……」
エルメーザは怪訝な顔をしている。
「…それ…飲んでください……エルメーザさん…」
レンシアが力無く呟くと、エルメーザはため息を溢しながらカップを持ち上げた。
「私はお前の事がずっと分からない…いつもお前は、言葉が足りないように思う」
「そうかもしれませんね…でも、お話ししたらきっとあなたは、凄く怒るから…」
「……」
「俺は…あなたを怒らせたいわけじゃなかったのです…いつだって……」
エルメーザはどこか呆れたような顔で、カップに口を付けて紅茶を一気飲みした。
彼はずっと遠い存在だと思っていた。分からないと思っているのはこちらも一緒だった。
「……っ…な…」
エルメーザは急に苦しみ出すと、カップを散乱させながらもテーブルの上へと倒れ込んだ。
そして動かなくなった。
「…何故俺のことを信じてくれるのですか?あなたは…」
テーブルに突っ伏すように倒れ込んでいる男に、レンシアは呟いた。
きっと彼は、見た目と態度以上に素直な人間なのだろうと思う。
馬鹿だなと思うと同時に、何だか嬉しいような気分にもなってしまって複雑だった。
だけどやっぱり、悲しみが大きくて。
時間が無い中で、より多くを救おうと考えた結果だ。
これで良かったのか、分からない。
何かを選び取るなんて自分には出来ないのだ。
レンシアはそこから動けず、ただただとろとろと涙を溢しながらそこに自分を縛り付けていた。
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