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目撃者 2

「サンちゃん!何があったのか教えて!」 「何がだと…?」 痛ぇ…、と唸りながら上体を起こそうとしているローラに理事長が手を差し伸ばして支えている。 「レンシーが捕まったんや…ローラも一緒におったはずよな?」 「レンシー……?誰だそりゃ…」 「え…?」 ローラは上体を起こすと、点滴が刺さっているのにも関わらず両手で顔を覆っている。 「ローラ…昨日のことは覚えているかい?」 「昨日……?」 理事長が優しく聞いているが、ローラは不可解そうに掠れた声を溢している。 大怪我で弱っているだけかもしれないが、いつもの覇気の無いローラがイオンには何だか不思議に見えてしまっていた。 「そうだ…確か……、ナイフで刺されたんだっけ…?」 「誰に!?」 「誰……?誰だったか……金髪のやつ……紫のリボンで結んでる…」 「それって…レンシーの事…?」 ローラの発言にイオンは膝から崩れ落ちそうになり、後ろにあった壁に背中をぶつける。 「う、嘘だ…!先輩なわけない!よく思い出してよ!!」 全員の気持ちを代弁するように叫んでいるリウムはローラに掴み掛かろうとしていてまたイヴィトに抑えられている。 「レンシアくんは友達だろう?本当に彼に刺されたのか?」 「……レンシアって……次期皇帝の婚約者殿か…?いや、元……?」 ローラは理事長の顔を見上げては、珍しく混乱しているように目を細めている。 「ローラ…どうした?」 理事長も様子がおかしい事に気付いたのか、不安そうに彼の顔を覗き込んでいる。 ローラは震える手で彼の服を掴んだ。 「ウィリンス……」 「……うん…?」 「気持ち悪りぃ…吐く……」 「え?」 ローラはそう言いながら理事長の上等そうなスーツのジャケットを鷲掴みにしたまま彼の膝の上に吐き始めている。 「き…キャァァ!?!」 「サンちゃん!!?」 「あ、アニーフ先生ーっ!!来てーっ!!」 瞬く間に医務室内は地獄になり、慌てふためく一同だった。

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