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狂信者たち 2

「明日の裁判だが…、君の弁護をしたいという者は現れていないそうだ。 呼べそうな弁護士も居ないんだったな?」 弁護士の宛などあるわけもなく、皇帝家相手の裁判に名乗り出るような命知らずはまず居ないだろう。 レンシアは、小さく頷いた。 「…形だけでも裁判が行われる以上弁護人は必要だ。 国が用意した者がつく事になるが異論はないな?」 「…ええ…」 「全く世話の焼ける…」 看守は吐き捨てるように言いながら、牢の前から去ろうとした所で別の看守が近付いてきた。 「どうした?」 「そいつに面会だ。弁護をしたいという者が来ている」 「何?」 看守は怪訝な顔をしたが、同僚に促されて仕方なさそうに鍵を開けて牢の戸を開けた。 そして、出ろ、というように顎で指図をしてくる。 レンシアはおずおずと牢の外へと出た。 「一体どんな敏腕弁護士だ?それとも命知らずなただのバカか?」 「後者だな。どうにもボンクラそうな男だったぜ」 看守はニヤニヤ笑いながら嫌味を言ってくる。 しかし、弁護士の宛などないレンシアも不思議に思えてならなかった。 どう考えても負けると分かっている上に、味方をしたと下手したらバッシングを受けかねないのに、と。

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