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僕らが守りたかったもの 4
「被告人!ですが…あなたがエルメーザ殿下に“怪しげな液体”を飲ませた事には間違いありません…!!
それも紅茶にこっそりと混ぜて!!
それは、やましい事をしている証拠のように思えますが!?」
「先程ローラ殿も“妙な動きをすれば”と男達が脅していたと証言されましたぞ!
つまりは被告人の動きは監視されていたという事です!実際すぐに犯行現場には人が駆けつけて発見された…これは、何らかの形で犯行グループが確認しようとしたと推測されるのではござらんか!?
つまりその段階でエルメーザ殿下がピンピンしていればローラ殿は殺されていたのかもしれない!」
「そんなのは詭弁だ!発見されたハートン学園の皇帝家専用サロンは結界が施され、犯行当時は被告人とエルメーザ殿下の2人きりだった!
本当に脅されていたのであればその旨を殿下にお伝えする事も出来たのでは!?」
「静粛に!!静粛に!!」
2人の言い争いはヒートアップしており、裁判長が止めに入り
裁判は一時中断されてしまった。
もう充分だ、とレンシアは思った。
自分は何もしていないけど、みんなに伝わったのだと思うと余計に。
あの時、イオンは自分を信じてくれた。
そしてローラは助かり、ヴェネッタ達の協力を得て真実が証言された。
多くの傷を生んだかもしれないし、根本の解決にはなっていないかもしれない。
だけど、結果的に自分は誰も殺すことはなかったし、更にこうして行動の事実が証明された。
きっと誰も信じてくれないだろう、と思っていたのにだ。
レンシアは泣き出しそうなくらい嬉しくなって、同時にとても切なくなった。
こんなに自分の事を想ってくれる人達ときちんと別れも告げられないまま離れ離れになってしまう事が、
そしてどう転んでも悲しませてしまう事も。
罪がいくら軽くなっても、
きっともう、会う事は出来ないだろうから。
レンシアは泣かないように両手を握り締めて耐えていた。
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