455 / 513
自分に誇れるように 5
「まず安全性についてだが、レンシアはこれでも元婚約者だ。
毒を盛られる危険性のある場所での食事の際はレンシアの“癒しの魔法”で解毒されたものを口にしていた。
故にレンシアが癒しの魔法を施したものは最高品質の安全性が保たれていると言える。
秘密裏に仕込ませたという点においては、私は当然見抜いて指摘をした。この時点で破綻している。
あとは今話した通りだ。」
「し…しかし…あなたを暗殺しようとしたという事は…つまり…皇帝家に反逆を…」
「何度も言わせるな。私はあの時点でそれを問いただし、レンシアの“計画”を阻止した。
あとはレンシアが淹れた液体入りの紅茶を飲んで眠っただけだ!それはもうスヤスヤとな!!」
反論した人間に対してエルメーザは凄まじい剣幕で怒っており、検察側の人間は全員泡を噴いて倒れそうになっている。
証言台を奪われて変な所に立っていたレンシアは、複雑そうにエルメーザを見つめている。
「エルメーザさん…あの……」
「今魔法使いがすべきことは、私の睡眠の質を向上させたこの男を罰する事ではなく
本物の国家転覆を目論むテロリストの行方を追う事だ!
無抵抗の学生2人を人質に取り、あろう事か学園に潜伏し、優秀な魔法使いを“冤罪”で裁くよう仕向けた狡猾な連中だ!
我々は愚弄されていると思わないのか!?この裁判自体が同士討ちをする哀れな者達だと反逆者共に嘲笑われているようなものだと分からないのか!
こうやってテロ組織の掌の上で転がされ騒ぐ事自体が国民に不安を与え、脅かす事になるんだぞ!!」
エルメーザは証言台を叩きつけ、法廷はシーンと静まり返った。
暫くして裁判長はこほんと咳払いをした。
「えー……無罪!!むざーい!!!!」
ともだちにシェアしよう!

