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おかえり 5
昨日の出来事が嘘みたいに、今日は穏やかで平凡な学園の一日だった。
普通に授業を受けて、みんなでご飯を食べて、飼育小屋で手伝いをして、聖堂で祈る。
そんな何気ない、変わり映えのないはずの1日が
レンシアにとっては奇跡みたいに、豊かで満ち足りた日に思えてしまうのだった。
何度も何度も、何かに巻き込まれるように、だけど確実に自分の選択でもあるから諦めるように。
それでも心のどこかでは、穏やかに過ごせる事を願い続けていた。
運命というものがあるとして、その願いが逆行しようとして居たとしても
誰かや何かの力のおかげで、結局はここへ戻って来れている。
こんな風に、まだ自分が過ごせている事に感謝をしながらも
これから先また運命とやらが自分を翻弄しようとしても、
やっぱり、
自分が自分であれるようにと祈った。
祈りが終わるとレンシアは少しだけ涙で滲んだ視界の中、聖堂の中央にある神とやらを象った像を見上げた。
本当にそのような姿形をしているのかは不明だけど、いつだって見ているぞというように睨まれているようにも思うし
反対に、いつでも見ているからなと見守られているようにも感じる。
「レンシアさん!」
聖堂に声が響いて、レンシアは振り返った。
イオンはこちらへ駆けてきて、笑顔を向けてくれる。
「あ…すみません、邪魔しちゃいましたか…?」
「大丈夫ですよ、今終わった所です」
レンシアは彼に微笑みを返し、備え付けられているベンチの一番前でだらりとした体勢で眠っているジンシーバに近付いた。
ジンシーバはお腹を天井に向けて、誇り高きドラゴンにあるまじき格好で寝こけている。
「ふふ。ジンシーバさん帰りましょう?」
声をかけてもまだむにゃむにゃしているドラゴンをレンシアは抱き上げた。
まだ赤ちゃんのドラゴンにとっては祈りの時間は退屈なのかもしれない。
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