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おかえり 7

「……テロリストへの幇助…ですよね… …ローラさんやジンシーバさんを傷付けたことや…エルメーザさんにしようとしていた事は許せないけど… ………でも…“分かってしまった”んです…あの人達の怒りや哀しみが…」 まるで自分も感じているかのように、どうにもならない事への焦燥感や虚しさや、何かにぶつけないと自分を保てないような憤り。 まるであちらの存在と対面した時のようだった。 あの時はこんなにも分かっているのに何もできない自分への無力感が一緒くたになって、レンシアの身体を蝕んでいたのだった。 「エルメーザさんの在り方は正しいですよ…より多くを守るためには、何かを犠牲にしなくてはならない… ……でも自分を犠牲にしては何も救えない…、分かっているけど…俺にはそれが出来ないから…」 「…そうかもしれないね… でも、レンシアさんはレンシアさんが思う正しい事をしたんでしょ。 それは…思い付いてもなかなか出来るようなことじゃない。 だから俺は…レンシアさんの事、もっと…好きになったよ」 そっとイオンに頭を撫でられて、レンシアは唇を噛み締めた。 優しく撫でてくれる大きな掌が、浅はかな自分を、子どもみたいな自分を、全部全部受容してくれているみたいで。 「レンシアさんは…やっぱり、レンシアさんだなって思ったら… あなたを好きになって正解だったなって思った…」 怖々と顔を上げると、緑色の瞳が新緑のように優しい光を纏っていた。 その光を浴びると、涙がポトリと零れてしまう。 「っ…イオンさん…」 「まだとかじゃなくて…ずっと好きだよ、レンシアさん」 「……うん…」 イオンはレンシアをそっと抱き寄せて、頭に口付けてくれた。 彼の香りに包まれながら、きっと、この人がいるから自分は自分であれるのかもしれないと思った。 誰に非難されても、自分に誇れるような選択が出来るのは、こうやって彼が教えてくれたからだ。 いつでも、自分は自分でいていいのだと。 それを信じてくれる人だから、 一緒に居たいと思えるのだと。

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