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それでも、付き纏う事 4
「私は立場上、あくまで中立で居なければならない。
今のこの国は、皇帝家を含めた様々な組織が絶妙なパワーバランスで均衡を保っている。
どこかに肩入れをすればあっという間に崩壊してしまうだろうからな。
…だが、やはり少々皇帝家に偏っている。
皇帝家、というよりも…ローザレック様に…だがな」
皇帝の弟であるローザレックは、国軍の総指揮でもあり皇帝家付きの上級魔法使いの直接の指示役でもあったはずだった。
そして皇帝家にまつわる取り決めも彼が中心になっている事が多い。
しかしクレンはローザレックに対して思うところがあるらしい。
「ローザレック様は“完全魔法主義”だ。
反魔法主義の主張とは完全にぶつかっているように思うが…あの方はそれすらも利用しようとしているように思える…」
「利用…?」
「反魔法主義は1つの主張の元集まっているわけではなく…
主張は大きく2つに派閥が分かれている。
1つは“完全魔法撤廃”、もう1つは“平等魔法主義”だ
前者はその名の通りだな。魔法をこの世から完全に消し去りたいと考えている。昨今の過激な動きを見せるテロ組織はこちら側だと踏んでいるが…
妙なのがもう1つの派閥だ。」
「平等…ということは、魔法を持たない人でも平等に、ということでは無いのですか?」
「表向きはそうだな。
だが彼らの中には、全ての人間が魔法を使えるべきだと考えている者もいる。」
「…全てって…でも、魔法は自分で得ようと思っても得られるものでは…
……まさか……“黒魔術”ですか…?」
レンシアは嫌な予感がしてつい腕を組み、口元に指を持って来てしまう。
新しく魔法を手に入れる合法的なものは1つもない。あるとすれば禁じられた手段なのだ。
「君のような連中ばかりだと話が早いんだがなぁ…」
クレンは何故か呑気にレンシアを回りくどく褒めている。
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