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それでも、付き纏う事 6

「…それを聞いて安心したよ。 君が本当はテロリストに触発されていたのだとしたら今すぐ拘束しようと考えていた」 クレンは逆にレンシアがスパイだと疑っていたようだ。 時間稼ぎをしたことはイオンにもバレていたし、彼ももしかするとおかしいと思ったのかもしれない。 「……俺はどんな理由があれ暴力的な事には反対です。 …ですが、反魔法主義の方々だって…本当は誰かを傷付けたいわけではないはずです… 不平等さを…理不尽さを感じて、それが抑えきれない憤りに繋がっている…」 彼らの“感覚”を思い出すと、恐ろしさに震えてしまう。 レンシアが両手を握り締めていると、不安そうな声を出しながらドラゴンが後ろから肩に顎を乗せてきた。 はぁ、と息を吐き出してレンシアはドラゴンの頭を撫でた。 もっと欲しいと願う気持ちも分からないでもない。自分もかつてはそうだった。 癒しの魔法がもっとあればと焦っていたのだ。 だけどそんなのは何の役にも立たない。 レンシアは、ふ、とイオン達が作っていた“無限ペン”を思い出して、ポケットから取り出した。 「…“魔法”は…、魂に宿る… 神から“先に与えられている”…、だから…還していかなければなりません 目の前の誰かや何かに…できれば平等に… それは魔法ではなくて…魂の、エネルギーの使い方……」 「……まるで“大天使”のような実に耳障りのいい綺麗事だなぁ」 「…これ、うちの学校の購買でも売っているペンです。 魔法がなくても、ずーっと書けるのですよ?」 クレンは何を言っているんだという顔をしていたが、レンシアは目を細めて彼にペンを差し出した。 「出来ない事を求めるのよりも、出来る事を考えていくようにした方がいい。 魔法も同じですよね…得意な魔法を強化した方がいい。 ……でも、このペンを作った人は…、出来る事を…今まで出来なかった人が“同じように出来るには”どうすればいいか、を考えているのです。 完璧に同じでなくても…でも、誰でも出来るように。 このペンはインクをいちいち付けなくても何時間でも書ける… “魔法”みたいでしょ? でもそれは、ここにインクが詰まっているからなんですって」 レンシアは立ち上がって、クレンの手にペンを握らせた。 「それ、差し上げます。 俺はもう1本持っていますから」 クレンは怪訝そうな顔でこちらを見上げていて、レンシアは微笑みかけた。 「……私に説教をしているのか?」 「そう聞こえましたか?」 レンシアがくすくすと笑うと、クレンは呆れたようにため息を溢している。

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