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それでも、付き纏う事 7

「…私が君に要求したい事は2つだ。 1つは以前言ったように有事の際は国営側に付いて欲しいという事。 そしてもう1つは…“癒しの魔法”は、君だけのものではないという事だ。 皇帝家の“管理”を離れたとしても、君が強力な癒しの魔法を有している事には変わりない」 クレンの言葉は、やはりどこにいて何をしても、魔法使いである限り自由の無いようなことに聞こえて レンシアは、仕方なく頷いた。 「君は今…保護者のいない“天涯孤独”だ。 今後もあらゆる勢力が君を手に入れようと動くだろう 今回のような強引な手段に出る存在も少なくはない」 裁判で、良くも悪くもレンシアと皇帝家の関係は そこまで複雑では無いと世間に示されたのかもしれない。 エルメーザ本人がわざわざ証言をしたというのは、レンシアを守ったと邪推されてもおかしくはない。 それ故に、取り入ろうとしてくる連中も出てくる、とクレンは言いたいのかもしれない。 「もしかして…心配してくださっているのですか……?それでわざわざ?」 「勘違いするな。あくまで君が強力なカードだからだ。 皇帝家との必要以上の対立は付け入る隙を与えかねん… 今はまだ“学生”という身分でハートン学園が守っているが 卒業後の身の振り方も今から考えておくことだ」 「卒業後……」 なんだか毎日平和に過ごす事が奇跡すぎて、卒業後なんて全く頭に無かったのでレンシアは肩を竦めてしまう。 「変な所へ養子に行くくらいならこちらで用意してもいい。 或いはもう…婚姻という形かもしれないが…」 妙に面倒見のいいクレンにレンシアは、彼が本当に味方なのか敵なのかよく分からなくなってしまうのだが 本当に反逆を企てるような人と繋がってしまうのは危険なのだろう。 「…でも俺…お付き合いしている方がいますし…… その、婚約…しようって…言ってくださっているというか……」 レンシアがぼそぼそと呟くとクレンは、はぁ?と眉根を寄せた。

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