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夢は叶うもの 2

レンシアがぼうっとよちよち飛んでいるドラゴンを眺めていると、頬っぺたにイオンの指が突き刺さってくる。 「1人じゃないんですけど」 そんな事を言いながら微笑んでくれるイオンに、レンシアは彼を見上げて息を吐き出した。 ああ、そっか。 自分はもう1人で何もかも背負わなくたっていいんだ。 そう思うと嬉しくて、そうでしたね、と頷いた。 「レンくん!次は君の番だぞ!」 「は、はい!」 サヴァトーラに呼ばれてレンシア慌てて彼らに近付いた。 「今の段階では到底先のようにも見えるが…ドラゴンは本当にいつ巨大になるか分からないからな。 慣れるに越したことはない」 「慣れる…とは?」 「飛行にだよ。」 「ひこう…」 「基本的にドラゴンは1匹で好き勝手飛ぶ事は法律でも良しとはされていない。 街中など人がいる所は絶対に禁止だ。 ジンくんが自由に飛び回りたい時は山奥とか海とか…そういう所に連れて行く方がいいだろう」 「はぁ…」 確かに巨大なドラゴンが急に街の上空を飛んでいたら騒ぎになるかもしれない。 山奥ってどこだろうと思いながらもレンシアは生返事をした。 「まあ…ネルシャとはちょっと形状が違うからなんとも言えないが… 基本的にはこうやって胴体に乗せてもらう」 サヴァトーラはそう言いながらネルシャの胴体の上に腰を下ろした。 『こう言ってはなんですが、わたくしよりも乗りやすそうですわよね。 昔話スタイルだとサヴァトーラがおっこちてしまわないかとヒヤヒヤしてわたくしいつも気が気じゃございませんのよ! だからいつもこうして背中を曲げてなるべくバイクみたいになっておりますの』 ネルシャは訳のわからない事を言いながらサヴァトーラを乗せてふわりと宙へ浮かび上がった。 「まあ乗馬みたいなものだと思えばいい。 だけど地に足がついていないというのは翼のない生き物は皆恐れるものだ。早めに慣れておくに越したことはない」 『まぁわたくしにも翼はありませんけれどもね』 「はぁ…」 サヴァトーラが何を言いたいのかよく分からず、レンシアはちょっとだけ浮いている彼らをぽかんと見上げてしまう。

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