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でかい実家に帰ろう 1
ハートン学園での1年間は、イオンにとってまさしく激動と言っても過言ではなかった。
他の人間よりも1回分人生を上積みしているイオンにとっても、1番色々あったと言っていいかもしれない1年間だった。
入学した当初は、友達の1人くらいできたらいいなぁ〜程度に思っていたけど、
気が付くと最高の友達は勿論、2つの会社に更には最高の婚約者まで出来てしまった。
そこに至るまでの道のりは自分でもようやったなぁと思えるくらいだったし、何度も心折れそうになったり物理的に死にかけたりもしたけど
今はとりあえずは落ち着いていると言えるかもしれない。
そしてイオンはとりあえず、幸せに包まれていた。
1年が終わり、学園は再び長期休みへと入った。
イオンとレンシアはハートン学園から汽車を乗り継ぎ、十数時間かけてリチャーデルクス家の屋敷までやって来ていた。
大変な山奥にある屋敷へは、汽車を降りてもそこからまた馬車で数時間かけて山を登らなくてはならず
イオンも帰ってくるのは1年ぶりだった。
レンシアは、ドラゴンを抱えたままぽかんと口を開けて止まっている。
いつものように紫色のリボンで金色に光る髪を束ねている彼は、いつもの制服とは違いワインレッドのトレンチコートを着ている。
吐き出す息は白くて、ドラゴンは彼のマフラーに包まれて寒さに震えているようだった。
レンシアの大きな旅行鞄と自分の鞄を両手に持っていたイオンだったが、
どうにか片手でそれを持って彼の元へと戻った。
「レンシアさん、こっちだよ」
「え…ええ……」
レンシアは戸惑いながらもイオンが差し出した手を取ってくれた。
彼の指先は少し冷たくなっている。
「ごめんね…こんな山奥で。しかも春先まで大体雪でやばいんだよね」
イオンは苦笑しながらも、タイルの敷かれた道を歩いていく。
一応道の雪は避けてあるけど、滑らないように気を付けなければならないのでレンシアの手をしっかりと握ってちょっとゆっくり歩いて行った。
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