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でかい実家に帰ろう 3
ゼルディーの後をついて行ってようやく屋敷の中に入ると、使用人達がわらわらと集まってきた。
「おかえりなさいませイオン様!」
「ただいま…」
約1年ぶりの帰宅にみんな嬉しそうに顔を綻ばせている。
「旦那様もお待ちですよ!」
「…の前にお2人とも暖まりませんとね!」
「さぁさぁどうぞこちらへ!」
屋敷には滅多に人が訪れないため使用人達は流石に張り切っているようで、2人は暖炉のある応接間へと案内された。
そこには既に暖かいお茶が用意してあるようだった。
「ご活躍は常々伺っておりますよ!さすがイオン様です」
「新聞にインタビューが載っておられましたなぁ。爺なんて記事を切り抜いて集めておりましたぞ」
「本当に…ご立派になられて…」
「あはは…お恥ずかしい…」
使用人達はみんなイオンの事を応援してくれているらしい。
産まれた時から見守られているわけだが、全肯定していつも味方でいてくれているので
使用人とか家族を超えて彼らはなんだかご先祖様的な、神様仏様的な存在に思えてしまっているイオンだった。
レンシアはそわそわとしていたが、彼に抱き抱えられていたジンシーバは暖かい空間にやってきてようやくマフラーの隙間から顔を出した。
そしてキラッと目を光らせると、藻搔いてレンシアの腕から抜け出し暖炉に向かって突進していく。
「あ…こら、ジンシーバさん…っ」
レンシアは慌ててドラゴンを追いかけ、暖炉の前に行こうとしていたジンシーバを捕まえている。
使用人達は驚いた様子だったがすぐにくすくすと笑い始める。
「す…すみません…」
「いえいえ!きっと寒かったのでしょう、どうぞこちらで暖まってください」
「ドラゴンの子どもなんて初めて見ました」
「なんとも愛らしいですな」
使用人達は2歳児の孫でも見るようにジンシーバの事を微笑ましく見守り始めていて、やっぱり仏みたいな人達だなと思ってしまうイオンだった。
レンシアは恥ずかしそうに顔を赤らめているが、ゼルディーが暖炉の前に大きなクッションを置いて行ってくれて
ジンシーバはクッションの上に寝転がって暖まっているのだった。
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